2016年02月18日(木)
生物性7 [寒蘭の勧め(旧)]
生物性の話が長くなったが大事な点が抜かっていた。
生物性はどこから来るかと言うことだ。
植え替えたとき新しい土にも若干の微生物は存在していると思うが、その後形作られる根圏微生物相(種類や数)はほとんどが親バルブ(葉や根を含めて)からだろう。植え付け時に消毒してもどこかには残っていて植え付け後に一気に増えてくる。
そして新芽が出るとそれに受け継がれていく。新芽が親の袴を破って出てくるときに炭そ病などは感染する。蘭菌は根が下りてくる初期の段階では感染していない。ある程度根が伸びたときに親バルブの根から間に土を介して感染しているようだ。糸状菌などは基本的に親バルブが保菌していても体内を通って新芽(新根)に感染することはない。防御機能が働いているからだ。細菌や放線菌も糸状菌と同様だろう。ただしウイルスだけは体内感染し親バルブから新芽に簡単に移行している。
また当然だがこれとは別のルートもある。腐敗病のフザリウム菌のように直近の鉢で発病があると潅水で飛散した胞子が鉢深く流れてきて、それに根の先端が触れると胞子が発芽して感染する。蘭菌もどこかで胞子が形成されていて胞子の飛散でも感染している。しかし直近の親根からの感染が早いだろう。
山苗では何年作っていても根が白くてきれいなものがある。これは微生物の種類が少なく根を茶黒くする雑菌がいないからだと思う。
そして株分けを繰り返した株は雑菌が年々多くなり新根にも同様の微生物相として移っている。消毒でそれらを少なくすることは出来ても根絶は出来ない。
私は以前から根を茶黒くしている(根被の付着物や内容物ではなく細胞壁自体が黒くなっていることがある)原因菌の一つは炭そ病でないかと考えているが、証拠を見つけることは出来ていない。炭そ病菌だとしたら山にはいないので山苗の根が白いのが納得する。(画像は炭そ病菌の胞子?)
私はこのブログで「根(根被の表面や内部)が茶黒くなるのは活発な微生物活動の結果で外皮以下が正常であれば何ら問題は無い」とずっと言ってきた。
逆に蘭や蘭菌はこの茶黒くなった物体(微生物と小動物の死骸や微生物が集めた土壌粒子など)を栄養源としていると考えられる。それによって蘭の生育は結果的に旺盛になっている。炭そ病菌も根皮でとどまっていれば最終的には他の微生物の餌となる。
問題は茶黒いのが根被にとどまらなくなった場合だ。
腐敗病のフザリウムは言うまでも無いが、炭そ病菌も大量にあれば外皮を突破して侵入してしまうかもしれない。また未知の菌が侵入していることもあるだろう。
阻害要因のところで書いたように蘭菌に問題があれば蘭菌の空けた外皮の穴から雑菌が侵入するかもしれない。
同じ栽培条件でも微生物相(種類や量)の違いで根痛みが違ってくる。
親バルブがどんな微生物相であるかはその後の栽培に大きく影響するのだ。そのため同じ品種の蘭をどこから入れても同じように作れるかというと作られないのが寒蘭だ。
寒蘭を購入する場合、親バルブがどのような微生物相であるか見定めて購入しないとバカを見ることになる。
また白い根を賞美する傾向にあるが何故白いかを解っていないと失敗する。
寒蘭の根を白くしようと消毒を繰り返すと微生物の数は大きく減ってくる。しかし完璧に根絶は出来ない。ある程度は残っている。この親株を新たな土に植えると同じように消毒を繰り返さない限り微生物の数を抑制することは出来ない。人が変わり棚が変わったとき微生物は一気に増殖することがある。
消毒で微生物の増殖を抑制してきたような株は消毒しなくなると強い菌が一気に増えてくる。弱い菌を抑えてアンバランスなこととなりやすい。弱い菌が蘭菌であったり強い菌が病原性を持っていると悲惨な結果となる。
一方で消毒が少ない親株は微生物の種類と量に均衡が保たれていて、新たに植え直しても同じように作れることが多い。
Posted by woods at 2016年02月18日(木) 06時52分 トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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